注意!
日にちなど捏造です。あとオリキャラです。
それでもいいよ!って方は荒い文ですが読んで下さるとうれしいです。
これは本当に展開も速いし、一気にやった感満載です。下手に磨きがかかってます。
でも、ずっと書きたかったお話なので、良かったら読んでください。
ここに、シャーリー・フェネットのことを書きたいと思う。
僕が昔、これ以上ないほど愛した女性であり、悪逆皇帝ルルーシュを愛した悲劇の少女。
そのシャーリー・フェネットと過ごした日々を、微力ながら語りたいと思う。
僕はその日、遅刻寸前だった。
昨日ゲームをやって夜更かししたためか寝坊してしまったのだ。
遅刻をしても成績的には問題ないのだが、何分自分は毎日一度は授業をサボるルルーシュ・ランペルージのような度胸は持ち合わせていない。
というか、親に知れれば大変なことになる。
だからこうやってもうすぐ始業のチャイムが鳴るだろう中、無駄に広いアッシュフォードの庭を全力疾走していると。
「あー遅刻――!!」
せっぱつまったような、高い声が後ろから響き、足は留めずにその方をうかがう。
見れば、彼女はアッシュフォード学園生徒会、そしてクラスメイトでもあるシャーリー・フェネットだ。
いつも皆に笑顔を振りまいており、しかも可愛いので、男子からも女子からも人気がある。
あの元気で気取らないところがいいらしい。
「ってアレ? 君、同じクラスのルイード君じゃない! 君も遅刻?」
「あ、うん。もう間に合わないかな」
僕が少し苦笑すると、フェネットは首をかしげた、と思うと同時手をぐいっと引かれた。
引いたのは細くて柔らかい、フェネットの手だった。思わず息をのむ。
「私、足早いから、ついてきて! きっと間に合うから!」
「あ…」
返事ができない。
頬が熱くて、彼女を直視することもできず、ただ心臓がどきどきするのに耐えていた。
異性として彼女を意識するのに、十分すぎる出来事だろう。
そして、僕が彼女に恋をするのはそれからすぐだった。
甘く切ない思いが、今でも蘇ってくる。
「なぁ、シャーリー・フェネットって、どんな子?」
「は?」
一番シャーリーの事を知ってそうな、リヴァルに問いかけた。
リヴァルは眼をぱちくりさせて、そして次第ににやりとした顔つきに変わっていく。
まったく、こういう冷やかしが好きなところは好きじゃないぞ。
「いい子だぜー。まあ、俺は友達としてしか見れないタイプだけど。顔もいいし、元気だし、明るいしー。あー、でも」
「何?」
「シャーリーはさ…」
「おい」
少しだけリヴァルが声をひそめて僕に囁こうとしたとき、低い声がそれを止めた。
「リヴァル、そろそろ行くぞ。じゃないと次に間に合わなくなる」
ルルーシュ・ランペルージ。
黒髪に、宝石みたいな紫色の瞳をしている中性的な容貌の男だ。生徒会副会長でもあるコイツは、他の生徒とはまるで違う、言葉では言いにくい何かを持っているように僕には見えていた。
「おっけー! ごめん、ルイード! また今度な」
「ああ、賭けチェスもほどほどに」
「おっまえ、言うことすげー似てるよ!」
誰と?
もうすでに去ってしまった友人に首をかしげながら、食べ終わった弁当を片付ける。
と、高い声が僕を呼んだ。
「ルイード君、今、リヴァルと話してたよね?」
「!」
シャーリーだ。
オレンジ色の髪を、今日は暑いからかポニーテールにしている。
いつも可愛いが、その新鮮さにときめいてしまう。
おい、なんだこれ。ときめくとか…恥ずかしいな、僕。
「ルイード! 聞いてる?」
「あ、ごめん、フェネット。ああ、話してたけど」
「フェネット? 嫌だな、よそよそしい。私の事は、シャーリーでいいから。君の下の名前も教えてよ」
ちょっと照れくさそうに肩をすぼめてフェネット。
それは、言えばそう呼んでくれるということだろうか。
僕は変な緊張感と高揚感に攻め立てられて、いつもより上ずった感じで答えた。
「フィン。フィンだ。」
「じゃあ、フィン。私の事も、シャーリーって呼んでね」
む、無理!
嫌とかじゃなくて、無理、なんだ。
その時僕は、幼く、そんな名前を呼ぶという単純なステップさえ踏めなかったのだ。
僕の動揺も知らぬまま、シャーリーは続ける。
「で、フィン。リヴァル、もしかしてルル…-シュ連れて、どっか行っちゃった?」
「ああ。おそらく駆けチェ…」
「もう! まったくやっぱり! ルルもリヴァルも、そんなことで成績落ちたらどうするのよ!」
留年したら、と続ける彼女。
僕はあっけにとられてその様子をみて、ぼそりと呟いた。
「…優しいんだな、フェネットは。
「え?!」
フェネットが大きく目を見開く。本当に驚いてるみたいだ。
「だって、普通、友達のことでそこまで怒れないだろ」
「…そ、そうかな?」
本気で照れたのか、真っ赤になってフェネットはうつむく。
だけど「でも」といい、顔をあげる。
「本当に大切…だから。優しいとかじゃ、ないと思うよ」
にこ、と眉をちょっと下げてフェネットは笑った。
今では、よく分かるんだ。自分がどれほどに無知だったか。
フェネットとは、それからよくしゃべるようにはなった。
といっても、「おはよう」とか「ばいばい」ぐらいだけど、僕にはとてもうれしかったように思う。
「フィンフィンーー!」
「リヴァル」
リヴァルがなんとも情けない声で僕に凭れかかってきた。
僕は顔に迷惑と書いてあるような表情をしながらも「何」と問う。
「頼む! 今日代わりに生徒会にでてくんねー? 今日、バイクの整備行かないと次がないんだよー。でも文化祭もあるから、サボるわけにはいかないんだ! 頼む!」
「…別に構わないけど」
「マジか?! サンキュー! 助かったぜ!」
正直、このとき僕は、フェネットのことしか考えていなかった。
生徒会にいくってことは、フェネットもいるんだ。一緒に仕事ができるってことだ。
嬉しくて緩みそうな口を、必死に食い止めていた。
「もうーホントに? リヴァルのやつ! ふー。仕方ないわね。ホントに人手が足りないから、頼んでもいいかしら?」
「あ、はい。そのつもりで来ましたから」
生徒会室に行く途中の廊下で、ミレイ会長と会い、事情を説明した。
僕がうなずくと、会長は「よし!」といって会長より頭一つ分は高いだろう僕の頭をなでてきたのだった。
「生徒会室に入るのは初めて?」
「そうですね、初めてです」
「そうだよねー」
そんな風に談笑しながら会長が扉を開けた。
かなり広いな。と、思った。中央に長い机があり、横には「文化祭!」とでかでかと書かれたホワイトボードがふんぞりかえってる。
だが、それよりも、すぐに目に入ってきたのは、フェネットの後姿だった。隣には、おそらくランペルージが座っている。
あちらも僕はともかく、会長だとはわかったようでこちらを振り向かないまま会話をする。
「会長―! 遅いですよ! 聞いて下さい、ルルってば」
『ルル』?
「おいシャーリー、何を言うつもりだ」
「だって」
くすくすとシャーリーが笑う。反対に、不機嫌そうなルルーシュの声。だが、完全に怒っているわけでなく、どこかまんざらでもなさそうだ。
というか、シャーリーの声がいつもと違う。
いつもより100倍可愛くて、100倍楽しそうだ。
僕といるときなんかよりも、ずっと、ずっと、ずっと、楽しそうだ。
「何、お二人さんイチャイチャして。今日はゲストもいるわよ!」
「「へ?」」
ミレイ会長の言葉で、ようやくこちらを振り向いた。
フェネットは一瞬驚いてから、すぐに嬉しそうに「フィンだ!」と叫んだのだ。
その時分かったことは、フェネットはルルーシュが好きなんだろうということで。
ルルーシュの事を語る彼女は、ルルーシュといる彼女は、いつもよりずっと、ずっと輝いているということだ。
7月7日、日本では『七夕』という行事が行われるらしい日のことだった。
その『七夕』について僕は別段詳しいわけでもなかったが、星空を観る、という風習などだと思い込んでいた節がある。
その日の夜空は、鑑賞するのにもってこいの美しい星が散らばっていて、きらきらと光るそれに僕は静かに胸を高鳴らせた。
あのルルーシュと二人でいるフェネットを見てから、ずっとふさぎこんでいた気持ちも、楽になるように思えた。
だからもともと、星空が好きだった僕は、その日、望遠鏡を持って学園の屋上に向かうことにしたのだ。
こっそりと忍びこんで、夜の薄気味悪い階段を上る。
そした重い扉を開けると、暗くてよくは見えないが髪の長い女の子の後姿があった。
もしかして幽霊?
そんな風に思ってぞっとした。思わず後ずさると、がたっと物音をたててしまった。
すると、ばっと女の子が振り返り――――――――――。
「フィン?!」
「…フェネット」
暗がりながら、はっきりと分かる。
彼女のオレンジ色の髪が、僕の持っていた懐中電灯で光った。
近づいていくと、フェネットはにっこりと――夜だからだろうか――いつもより大人っぽい笑顔で笑い、とがめる様な口調で言う。
「シャーリー、だよ。フィン」
「ああ…悪い」
だけど君は――――――――――。
彼女の格好は上下パジャマで、色気なんてないはずなのに、とても僕には扇情的に見えたのを覚えている。思春期だったからか、いやそれよりも何か――とてつもなく大きなものを背負ってしまったみたいな、哀しげなもので。
もしかしたら、僕の気分がそうさせるのか、とも思った。
「それ、何?! 望遠鏡っ? すっごーい!」
と、思ったのも一瞬。
いつもの元気な彼女に変わったフェネットは、一気に僕に詰め寄り、望遠鏡を覗き込む。
「僕、こういうの好きなんだ」
「へえ、あーでも。そんな感じだよね。熱帯魚とか好きでしょ?」
「凄い、何でわかったんだ?」
「……お父さんと同じだから」
えへへ、と無邪気に笑う彼女。
そうか、彼女のお父さんと同じなのか。そう思うと、何だかうれしくて、いつもより気合をこめて望遠鏡をセッティングしたのを覚えている。
「お父さん、好きなの?」
まるで自分のことを聞くみたいに真っ赤になった。
夜だったから、よかったけど。
「好きよ。凄く優しくて、真実を話してくれる人だから」
「真実?」
「そう。アイツとは違うもん」
「アイツって」
夜風が寒い。
「ルルーシュ?」
「そうよ。アイツ、嘘ばかり、つくんだよ」
「そんな感じだ」
いつも、ルルーシュは人に優しく笑っているが、どこか人を見下しているような、そんな風に見えることも多々あった。
「でも、でもね! 優しいから…っ」
「フェネット?」
彼女の声が涙声に変って、僕は焦った。
どうしたんだろう。やっぱり辛いことがあったのか。
僕は心配で、精一杯の勇気で彼女の頭をなでた。
すると、驚いたようにシャーリーが僕を濡れた目で見上げて、それから僕の肩に頭をのせて、ぐりぐりと押しつけてくる。
「私…っ、どうしよう……。その優しさに、つけこんじゃった。つけこん…っじゃ…」
「つけこむ? …何かあったの?」
そんなことは明白だ。だが混乱している僕は、その時適切な言葉を選べなかった。
「………。」
「…フェネット」
促すように名を呼んだ。
フェネットが大変なのに、ドキドキと鳴る心臓が煩わしい。
彼女は顔を上げない。断絶的に肩が揺れて、泣き続けているのが分かった。
「……シャー…リー」
何も言わない彼女の名前を、小さく名を呼んで、落ちつかせるように肩に手を置く。
それだけが、僕の精一杯だった。
次の日、7月8日、彼女の誕生日であるその日、僕は彼女の父親が死んだのだと知った。
「シャーリー、今日も休みか」
「うん……」
リヴァルとスザクがシャーリーの席を見つめて、呟くような声で言う。
スザクなんかは、今にも泣きそうだ。
あの時、彼女はどんな気持ちで言ったのか。
『……お父さんと同じだから』
自分はどれほどに彼女を分かっていないのろうか。
もし、ルルーシュがあそこにいたならもっと気の利いたことを言えたのだろうか。
彼女が抱えていた事実を訊くことが、できたのだろうか。
できたんだろう。
だってきっと、あのとき泣いたのは父親の為でなく、ルルーシュの為だったろうから。
おかしい。
異変に気づいたのは、彼女が登校に復帰してすぐのことだ。
彼女がまるで、ルルーシュのことを初対面のように接するのだから、わからない方がおかしいだろう。
あの時、「つけこんだ」と言っていたことが関係しているんだろうか。
ミレイ会長やリヴァルは『他人ごっこ』だと言っているが、僕にはとても信じられなかった。
彼女は嘘をつくことを嫌悪していた。
僕はその日、屋上に言った。
ルルーシュと会うためだ。
「ルルーシュ」
「……ルイード」
いつもみたいに、嘘の笑顔を貼り付けてルルーシュは答える。
…ルルーシュも、様子が変だ。
いつも冷静で静かだけど、今はなんというか、暗い感じだと思う。
やっぱり、二人に何かあったのか。
「シャーリーと、何があったの」
「ちょっとした、喧嘩さ」
「ごまかすな。おかしい、シャーリーは嘘は嫌いだろう?」
そう言うと、ルルーシュが僕の顔をしっかりとその瞳にうつした。
ああ、今気づいた。
ルルーシュの瞳には、僕を含めクラスメイト、他人はその瞳に映し出されることはないのか。
だけど特別がいるんだろう。
妹のナナリー、親友のスザク、生徒会仲間のリヴァル、ミレイ会長、ニーナ、カレン、そして―――――――――。
「シャーリーは、君が好きだろう?」
「……まさか」
すっと目線をそらされた。
「君はひどい。」
本当にそう思った。
必死で感情を抑えていた。今にも怒鳴り散らしそうな自分を、必死でこらえていた。
「君はひどい。何もしようとしないのか。あちらが興味をなくしたら、こちらは何もしないのか」
「…お前とは関係ないだろ」
冷たい声だ。
そこまでたどり着けたということだ。
「あるさ! 僕は君の行動が理解できない。シャーリーといる時、君はすごく楽しそうだっただろうっ? なのになんで、なんで彼女にそんなに酷いんだ」
「お前には関係ないだろうと言っている!」
「だから、あるって言ってる!」
今思うと、子ども同士のけんかみたいだった。
お互いに主張しあうだけの、バカげた。
そう、僕は理解していなかったんだ。なのにただ自分の知っていることだけを並べて、彼を攻め立てた。
「シャーリーはあんなに君が好きなのに! 君といる時輝いているのに! 彼女から何を奪ったんだ! 何を奪った? 君だろう! 何かを知っているのは、奪ったのは、君だろう!!」
一瞬、彼がひどく傷ついた顔をしたことを、覚えている。
それからブラックリベリオンをきっかけに僕は転校し、彼と会うことは一度もなかった。
一年後、僕はイレヴンへと向かった。
なぜその頃荒れていたそこへ行ったのかといえば、彼女だった。
一年たったのに、僕は一日だって彼女を忘れる事が出来なかったのだった。
特に、あんな不可解の状況のまま別れてしまったから、尚更かもしれない。
(何故シャーリーは学園に残ったんだ?)
正しくは、なぜ残ることが出来たんだ? だ。
他にもミレイ会長はともかく、リヴァル、ルルーシュなどは学園に残ったままだった。
なぜ生徒会メンバーだけなんだ?
それがとても不思議でたまらなかった。
久し振りのトウキョウ租界を歩く。
そんな時だ。
――――何だ?
目の回る感覚。
足が止まる。
たくさんの記憶が、凄い勢いで押し寄せてくる。
「あ…何だ……?」
『お前たちは、ナナリー・ランペルージの記憶を全て無くす。そしてアッシュフォード学園は半壊され、通えない状況だと―――』
皇帝…そうだ、皇帝が…!
ナナリー、だって?!
瞬間、大きなポスターが目に入る。
『ナナリー・ヴィ・ブリタニア』
おかしい…だろ?
彼女はルルーシュ・ランぺルージの妹で、生徒会の一員で…。
何なんだ、これは。
「フィン?」
「! シャーリー!」
久し振りに見た彼女は、何も変わっていなかった。
ただ、少し大人っぽくなったようにも思える。
「そっか! …私も、なんだ…」
昔より酷く元気がなさそうにも見えた。
確かに、こんな催眠術にでもかけられたみたいな感覚はひどい。
思い出す。
彼女が不可解になったのも、こんな現象だとしたら?
「そういえば」
「ん?」
「ルルーシュのこと、今も好き?」
「な…」
頬が赤く染まる。
ああ、好きなんだ。
今、思いだしたから? 違うだろう。
あの頃から、一年また、彼と関わって好きになったんだ。きっと。
「私、でも」
「?」
「分からないの。だって、ルルは嘘ばかり」
「でも、そのルルーシュが好きなんだろう?」
シャーリーが顔をあげる。
だって、そうじゃないか。
君はいつも彼を「うそつき」と言いながら、とても好きじゃないか。
彼の為に泣くじゃないか。
「僕は、ひどいウソつきで、…君は怒るかもしれないけど、大っきらいだ。でも、君はいつでもルルーシュを見てる」
君が不可解になっても、君がルルーシュばかり見てたのを知ってるんだ。
「いつも、いつもだ。あんなに秘密主義で偉そうな男なのに」
「そ、そんな…っ」
「ほらまただ。僕にしてみたらかばう意味が分からない」
はんっとした顔でシャーリーを見てやると、何だか可笑しそうに笑っていた。
思わず首を傾げると、笑って言う。
「君って、凄く正直。…君みたいな人を」
ふっと目を細めて悲しげに笑う姿は、とてもきれいだ。
昔は可愛いばかり言っていたのに、とても、綺麗で。
「好きになれたらよかったのに」
ああ、ひどい。
君もひどいな。
僕は君のことがこんなにも好きなのに。君はひどいことばかり言う。
結局、ルルーシュしか見れないんだろう?
好きになれたら、なんて。
僕は泣きそうになって、立ち上がった。
「どうせルルーシュのくせに」
「…そうかな」
「そうだ。」
「……そうだね!」
何だよ。
そんな嬉しそうに笑わないでよ。
ぱあっと花が開くみたいに彼女は笑うので、ちょっと腹が立って。
「僕はシャーリーが好きだよ。ルルーシュなんかより、ずっと魅力的だ」
「へぇ…って、え!?」
驚いている彼女の瞳。僕が映る。
君の瞳もルルーシュと同じだ。
僕なんて圏外なんだ。
だけどやっと、僕を映してくれた。
そんな彼女にニコ、といたずらっぽく笑った。
「冗談だよ」
その日、シャーリー・フェネットは死亡した。
何が原因なのか。
おそらくルルーシュは知っていたのだろう。
そしてあれから、戦争は肥大なまでに拡大し、僕も両親をなくした。
確かに、僕は彼らを許せない。
ルルーシュとスザク。
僕の中で、彼等は皇帝と騎士じゃないが。
だが、本当に虐殺が目的だろうかと本気で考える。
そんなことを、もし兄弟に言ったなら、怒り狂われるのは分かっているんだ。
彼はそれだけのことをした。
でも本当に? アイツは自分の為にそれをしたのか?
やはり信じることが出来ないのだ。
彼は確かに嫌味な奴だったが、たまにとても優しいときもあった。
大人になった今、彼がとても魅力的に思えるのは、彼が大人だったからか。
何よりも、シャーリーの惚れた男がそんなことをするはずがないのだ。
だろ? シャーリー。
君の愛した男は、今じゃ悪の象徴だ。
だがそれを悲しまないでくれ。
ミレイ会長、リヴァル、ニーナ、カレン、そして僕。
この五人は少なくとも、信じてるんだ。
何を? って聞かれたら、困るんだけどね。
皇歴2020年 7月7日
明日、誕生日を迎える愛する君へ。
フィン・ルイード