「わたしね、おおきくなったら、おとーさんと結婚するんだぁ」
おさななじみの、シャーリー・フェネットが突然そんなことを言い出した。
シャーリーはようちえんで一番かわいいってみんなが噂してる、オレンジ色の髪のおんなのこだ。
いつもおてんばで、走ってて、よくころぶ。
そんなシャーリーが、砂の山を作りながら、そんなおやくそくのことを言い出したのだ。
「…それは、むりだよ」
ぼくは、何故かちょっとむかついていた。
「どうしてっ?」
ぼくに詰め寄りすぎたシャーリーが、いっしょに作ってた砂の山をくずしてしまう。
「ああ」と高く声をだして、泣きそうな顔になってぼくをちらりとみあげた。
「ごめんね、ルル、こわしちゃった」
「……べつに、いいよ。こんなの、またつくればいいし」
というか、実は砂の山じたいに興味がなかった。
ただシャーリーがきらきらしている笑顔で一緒につくろうっていうから、しようと思っただけだから。
「そんくらいで、泣かないで」
「……うんっ」
頭をなでると、ぼくをうるんだ瞳で見つめて、おおきくうなずいた。
かわいい。
ぼくはそんなことをおもった。
「…お父さんとは、血がつながってるから、けっこんできないんだ」
「そうなの?」
しょぼっと落ち込む様子を遮るように声をあげた。
「だから」
「?」
「ぼくと」
「え…」
「…」
「…」
「わぁあああああ」
ずっさあああああと砂場を転がってシャーリーから思わずはなれた。
ぼくはなにを言おうとしてたんだ! はしたない!
というよりもそんな将来のやくそく、なんて、なんて。
「……シャーリー」
僕は大きな瞳をもっとおおきくしておどろいているシャーリーに、もう一度くちをひらいた。
きみとなら、いきてもいいかもしれない